人物風土記

人物風土記

2021.12.10

藤沢版掲載号:2021年12月10日号 タウンニュース

掲載頂きました。

掲載記事の言葉は、取材時の私の言葉の真意を汲んでいてよりわかりやすくかみ砕いてくれていて、とても感謝です。

藤沢タウンニュース 人物風土記

以下、掲載記事より

伝統に革新織り交ぜ

○…藍染めにほれ込んだ。左官にほれ込んだ。でも、どちらも衰退しつつある技術だった。ならばと二つを組み合わせると、そこに新しい価値が生まれた。従来の発想では辿り着かない領域に踏み込んで見せたのは独学ゆえの柔軟さから。「藍左師」を名乗り、近頃は地域課題を解決する社会起業家としても活動の幅を広げている。

 ○…海の青さをそのまま写したかのような机に大理石模様のプレート。いずれも自らが手がけた。珪藻土や土を材料とする日本古来の漆喰は耐久性に乏しく、家具として応用する発想はなかった。そこに変革をもたらしたのが欧州の左官材。石英や樹脂が原料の素材ならば加工が効く。これと藍を組み合わせ、日に当てても退色や劣化しないよう配合を繰り返し、家具やアートに応用できる技術に昇華させた。日々藍を扱う手は青く染まり、奇異の目で見られることもしばしば。「よく美容師やバンドマンに間違えられる」と笑う。

 ○…高校卒業後、土木関係の会社で下積みを経て21歳のとき独立。2年後会社を立ち上げ、住宅や店舗のデザイン施工を手がけてきた。下請けの仕事は安定こそあったが、これで良いのかという鬱屈(うっくつ)とした思いもあった。だから創作活動に専念する今が楽しくて仕方ない。「自分の意思一つで何者にもなれる。若い子たちに伝えられたら」

 ○…藍の可能性はアートの領域に留まらない。染め直せば再利用できる特性は持続可能な社会形成にもつながる。その皮切りが、このほど発足した「フジサワブルーハンズプロジェクト」だ。染めの工程を障害者に担ってもらい、雇用の創出を図る狙いもある。「身の回りにある課題を、ポジティブに変換していきたい」。確かな意志とともに視線の先を見据えた。

Reita MORIYA