運命の鉄路

運命の鉄路

2021.10.4
先日、迷いようのない真っ直ぐな運命の鉄路を歩く感覚で訪れた江之浦測候所。
到着した駅名のように目の前に現れたのは樹齢を物語る圧倒的な木に書かれた"青天を衝け"
目に見える世界の感覚では声を出して驚くような出来事だが、目に見えない感覚世界では「そりゃそうか。」と妙に納得できるものだ。
私の作品や造作物においてことごとく共感でき、
こんな感覚や概念をもつ人が同じ時代に生きている事に深く感動している人物。
杉本博司が描いた題字だった。
昨日たまたま訪れた書店にて、見つけた本
「新素研」Old Is New
杉本博司
榊田倫之
自分の作品や壁を手で触るように無意識に表紙を触った。
本を開くとその表紙について書かれていて、思わず笑った。
さすが杉本博司。あなたはやはり、ことこどく僕の魂を揺さぶる。
🪨
表紙の絵柄について
 
 
この本のジャケットには抽象画が採用された。
しかしこの絵は初めから抽象画として描かれたものではない。それは偶然に絵となったものだ。私は熱海にあるMOA美術館全面改修にあたって、全長17メートル、高さ4メートルの壁を6面、日本の伝統工法である黒漆順でおおうことにした。
漆喰は石灰だ、そしてコテで塗られる。現代建築は乾いた材料を好む。しかし伝統工法は湿式工法が多い。この巨大な壁面を自地なしで仕上げるには1面を1日で終わらせなければならない。熟達の職人が3人集められた。1人ひとりコテの運びが違う。伝統工法を用いてこれだけの巨大面を仕上げたことは、日本建築更上ないのではないかと自負している。
漆喰そのものが稀になった現在、普通は白の漆喰に炭の粉を混ぜて黒にするのはさらに稀だ。乾くのに時間がかかる。
数日後、その面に立ち現れたのはほぼ無意識のコテの痕跡だ。
 
私はそこに意識を超えた美しさを見出すのだ。
大昔、人が意識と無意識の後間で描きはじめた洞窟壁画もこのようにはじまったのに違いない。
 
Old Is New.
忘れられた古代の魂、私は現代にあって、その魂の姿をもう一度見てみたいのだ。
衫本博司
Reita MORIYA